或いは孤独癖






十五歳の時に親元を離れてから
三十歳を過ぎて結婚をするまで
ずっと一人暮らしをしていた


長い間
一人でいると気楽さに溺れていく

好きな時に本を読み
音楽を聴き
ギターを弾き
テレビやビデオを観る

時には一日中
誰と話すこともなくボーっとして過ごす

行きたい時に行きたい所へ車を走らせる


何をするにも自由気まま


だから独りでも
それで孤独という意識は無かった


仕事を離れた束の間
趣味や好きなことに費やす時間が
唯一
自分が自分に戻れる時間でもあった


<自分を取り戻せる時間>

そう言っても良いかも知れない


だから
そんな独りの時間は嫌いじゃなかった


孤独癖?


自分は結婚には向いていないのかもしれないと
真剣に悩んだ時期もあった

案の定
結婚してからは全く自分の時間が無くなった

子供が出来てからは尚更だった


会社で自分を抑え
家に帰っても色々な意味で我慢をしていた

それが社会人として
大人として当たり前だと自分に言いきかせていた

それが大人というものなんだと


だから結婚をしてからは
もう自分の時間など無くて当たり前なんだと
そう思い込もうとしていた


人間って
割り切れば案外なんでも平気になるものだ

慣れてしまえば
どんな現状でも
それが逆に楽に思えたりする


しかし
そのままでは
いつか小さな裂け目から
思いは綻んだりするもので

やがて何処かに無理が生じる


そして思い出す


『そうだ! 俺の居場所は?』




自分の時間

それは自分で作らなければ
等閑(なおざり)にされてしまうだけなのだ

自分で探さなければ見つけることなど出来ない


しかし

本来
人間は決して独りが好きな訳ではない

本当は理解されたいと願って理解されない時に
ただ
自分の居場所を探そうとするだけなのだ


その居場所は独り分しかないのか
或いは
もう少しだけ余裕があるのか

それは自分の心に問うしかない


































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