永遠の賞味期限
「ねぇ、知ってた?
<永遠>にだって賞味期限があるんだよ」
「えっ? 何それ? そんなもん無いよ。
第一、それじゃ永遠にならないじゃないか」
「じゃ、永遠って何?」
「そりゃ・・・ずっと、いつまでも続く事だろ?」
「ずっとって、いつまで?」
「ずっとはずっとだよ。未来永劫とか言うじゃん」
「未来って誰の未来?」
「そりゃ・・・人類とか?」
「未来って人類のなの?
じゃ、明日人類が滅亡をしたら永遠は明日までって事?
それじゃ永遠じゃないわ」
「そんなの屁理屈だよ」
「だって、人類なんて歴史のほんの一部に過ぎないのよ。
地球にだって人類が存在しなかった時があったし
もし、人類が絶滅したって地球が残っていたら時間は続くし
仮に地球が無くなっていたって宇宙が全部無くなる訳じゃないでしょ?」
「じゃ、永遠は時間の事だって言うのかい?」
「そうね。そう言えばそう言えるのかもね」
「なんだい? 違うのかい?」
「ううん、違う訳ではないんだけど」
「ないんだけど?」
「うん。なんて言ったら良いのかなぁ~
永遠ってね、そんな無機質なモノなのかなって思うの」
「永遠に無機質かそうじゃないとかってあるの?」
「人間にとってはね。少なくともそう思う」
「どういう事?」
「例えばね。時間が過去から未来に流れるのって無限だと思うの。
だって、時間ってね。
ここでも宇宙の果てでも大昔でもずっと遠い未来でも
何があろうと無かろうとずっと続いていくものよね」
「まぁね。時間とはそういうモノだしね」
「そうね。だから時間は無機質なのよ。
何かに左右されるって事もきっとないわよね。
でも、永遠ってどう? 同じだと思う?」
「ん~ 同じじゃないの?」
「時間って、人間がそう名付けただけで
人間の意志には関係無くただ流れていくのよね。
ううん、流れているのかさえ本当は解らないわ」
「まぁ・・・」
「でも、永遠ってね。人間だけが持つ概念だと思うの。
そこには<想い>が込められていると思わない?」
「想い?」
「そう。誰かへの想い、何かへの想いとかね。
それが有っての永遠だと思うの」
「ん~」
「つまり、Aという人にとってはその人が死ぬまでが
Aという人にとっての永遠なのよ」
「じゃ、俺と君の永遠は違うのかい?」
「私とあなたでも違うと思う。
ただ、私の中では私の永遠もあなたの永遠も一緒よ。
もし、私が先に死んだら、そこであなたの永遠も終わるの。
私の中ではね。
でも、あなたの永遠は続いていくわ。
あなたが死ぬまでね」
「ん~ そういうものなのかな?」
「あなたの中で私もあなたの永遠が終わるまで生きていたい」
「それは俺もだよ。
どっちが先に死んだって・・・
あっ、それが君の言う<賞味期限>ってやつ?」
「それもそうなんだけど・・・
でも、どんなに永遠だと思っていても
ちょっとした事で人間って心変わりをするわ。
その時が賞味期限なのかなって」
「だから、永遠にも賞味期限があるって説だね?」
「そうね。絶対に来て欲しくない賞味期限だけど。
私、生きている間は
あなたとの永遠をずっと大切にしていきたいの」
「もし、そうだとしたら
俺は永遠なんてクソッくらえだな」
「どうして?」
「本当の愛って死んで終わるようなものなのかい?
俺はそうは思いたくはないな。
確かに人間はいつか死ぬよ。
どんなに愛し合ったって
必ずどちらかが先に死ぬだろうけど
魂になったって愛は生き続けるだろうし
いつか生まれ変われるとしたら
又、君を探して恋に落ちる。
そうやって、愛は繋がっていくもんだと思いたいよ。
それが永遠って意味なんだって思う。
違うかい?」
「うふふ。ロマンチストね」
「そもそも永遠って言葉自体がロマンチックだからね」
「そうね。でも、その言葉はちゃんと覚えていてね」
「もちろんだよ!」
「そうじゃなきゃ永遠にあなたを呪うわよ」
「おー怖っ! ずいぶん怖い事をシレっと言うね?」
「それも愛よ」
「ん~ やっぱり、永遠にも賞味期限が有る事にする?」
「だ~め! それじゃ、永遠にはならないんでしょ?」
「あれっ? なんか言う言葉が変わってないか?」
「それが女なの。
女はね、頭の中と心の中は違うのよ」