I LOVE YOU (夏目漱石に脱帽!?)




長女が学校から帰るなり
私に向かって訊きました

「ねぇ、おとうさん
 
昔、夏目漱石がある英文を
 
『月がきれいですね』って訳したらしいんだけど
 
元の英文って分かる?」

「『月がきれいですね』?
 そりゃ、『The moonlight is so beautiful』
 とか、『It's so beautiful moon』じゃないの?」

「あのさ、それで問題になると思う?
 
それじゃ、そのままじゃん」

「何だそれ? 英語のテスト?」

「いや、そうじゃないんだけど
 
有名な話らしいから
 
お父さんなら知ってるかと思ってさ」

「え〜? 何だよ、それ」

「ちなみにね、二葉亭四迷は
 
同じ英文を全く違った訳をしたんだって」

「なんて?」

「それ言ったら絶対分かるよ
 
本当に知らないの?」

「知らないよ」

「へぇ〜 じゃ、考えてみて

「『月がきれいですね』だよな?」

「うん、でも”月”で考えてたら
 
永遠に正解しないよ」

「そこまで言い切る?」

「うん、頑張って!」

「あのなぁ〜 じゃ、何だよ?
 ヒントは?」

「ヒントじゃないけど
 
私はその話を読んでちょっと感動したよ
 
凄いなぁ〜って」

「感動?」

「うん、普通は絶対そんな訳し方しないもの」

「え〜? なんだ〜?」

「さぁ、考えて?」

「ん〜 ”きれい”は使う?」

「全然!」

「なんだ、それ? じゃ、分かる訳ないじゃん」

「お父さんの良いブログネタになるよ
 
さっ、考えて!」

「はいはい
 ブログネタの心配までして頂きまして
 ありがたい限りだわ
 嬉しくて涙がチョンチョンだな」

「何それ?」

「それはいいんだよ」

「お父さん、壊れてきてない?(笑)

「あはは、かもな」

「で、分かった?」

「ちょっと待て・・・」

「これってどんな状況を想像する?」

「『月がきれいですね』ってか?
 そうだな・・・
 恋人同士が並んで歩いていて
 それで、その2人は
 まだ付き合って間もないから
 あまり話題も豊富じゃなくてさ
 会話が途切れて気まずい空気?
 ふとお互いに無口になった時に
 シャイな男が彼女に向かって言うんだよ」

「なんでシャイな男なの?」

「何年も付き合ってる相手に
 『月がきれいですね』なんて言わないだろ?
 そんな場合は
 『おー、すっげー月じゃん』とかさ」

「夏目漱石がそんな訳をしたらおかしいしょ?」

「あはは、そうだな」

「でも、お父さんも凄い妄想族だね
 
良く、そんなひと言で
 
そこまで話が膨らむね」

「なんだそれ? 褒めてんのか?」

「近いね(笑)
 
でも、そこまで考えられるなら
 
答えも近いよ」

「男が女に言うんだよな・・・
 『You are so beautiful』とか?
 ほら、まだ面と向かって
 ”好きだ”って言えないからさ」

「お父さんって”so”が好きだね(笑)
 
でも、すっごい良い線いってるよ
 
でも、残念〜♪」

「違うのか?
 ん〜 じゃ、『Dreams come true』は?
 ”あなたと付き合えて夢が叶った”みたいな」

「ん〜 良い線いってるんだけどね
 
降参する?」

「しねぇよ」

「お父さんって結構負けず嫌いだよね」

「放っておけ!」

「じゃ、頑張って!(笑)」

「お前、楽しんでるべ?」

「まぁね(笑)」

「じゃ、その二葉亭四迷はなんて訳したんだ?」

「えー? 教えて欲しい?」

「うん、そのくらい良いだろ?」

「二葉亭四迷は
 
『あなたの為なら是の命でさえ』
 
って訳したんだって」

「『是の命でさえ』?
 したら『You are my destiny』じゃん」

「どう言う意味?」

「『君は我が運命(さだめ)』」

「あー。それも正解で良いかも!」

「違うのか?」

「残念ながら(笑)
 
でも、すっごい惜しい!」



私は知らなかったですが
長女いわく”有名な話”らしいので
知っている方にとっては
何て事は無い話だったかも知れませんね


正解は

『I love you』

なんだそうです


夏目漱石が訳した一文は
どんなシチュエーションで
前後に
どんな会話がなされていたのかは分かりませんが
それにしても
『I love you』を『月がきれいですね』
と訳すなんて
確かにちょっと感動モノです


先に話した私の想像が
(長女いわく”妄想”?(笑))
当たっているとすれば
シャイな男が精一杯の気持ちで
『I love you』と言ったのでしょうから
そのまま”愛してる”じゃ
男のシャイさを表現出来ません

だからこその
『月がきれいですね』
なんですよね

一見、突拍子もない訳のような気もしますが
その空気感は新鮮な感動です


多分、私だったらありきたりに
陳腐な台詞にしていたかも知れません


なので
勝手に名誉挽回?(笑)

夏目漱石の訳を踏まえた上で
夢乃流に”夢”を使って訳すとすれば

そうですね〜


原文 『I love you』

夢乃訳『夢なら醒めないで欲しい』


ん〜 やっぱり
『月がきれいですね』
の方がオシャレかな


今夜のところは
素直に負けを認めましょう

(って、文豪と張り合うつもりだったの?(笑))


夏目漱石に脱帽です

 
























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