記 憶




忘れていた事を
何かの拍子にふと思い出す事がある


そのキッカケは
ラジオから流れてきた歌だったり
テレビの中の懐かしい風景だったり
それは様々だけど


時として
思い出が心の扉をこじ開けたかのように
突然甦る事がある


抑えられない
感情のうねりが溢れだすかのように




忘れていた事・・・


いや
忘れようとして心の中に封じ込めていた事・・・



ハイファイセットの歌に

”忘れようと思うから忘れられるはずも無い”

と言うフレーズの歌がある
  (*「ひときれの恋」より)



忘れようとしている時
人は必ずその事、その人を思い出している

だから、忘れられない


忘れようと思えば思うほど、
望むと望まざるとに関らず
脳はあらゆる限りに
力を総動員して記憶を鮮明なものにしようとする




評論家Aは言う

 「別れた恋人を忘れる為に遣う時間は
  愛した時間の3倍かけてもまだ足りないものだね」


評論家Bは答えた

 「いやいや、
  人間なんて案外簡単に忘れてしまえる生き物さ」


評論家Aは反論する

 「はたして君はそうかい?
  なら、君の頭の中には
  都合の良い記憶しか残っていない訳だね?
  それで幸福かい?」


評論家Bは少し考えて答えた

 「悲しい事をいつまでも覚えている事の方が
  不幸なんじゃないか?」


評論家Aは言う

 「確かに、いつまでも覚えている事が
  必ずしも幸福とは思わないよ
  でもね、簡単に忘れ去る事も良しとは出来ない
  美しい思い出ばかりでは無いけど、
  それでも、どんな悲しい思い出も辛い思い出も
  自分が歩いてきた道の証しなんだから」




評論家AとBの話はまだまだ続くだろう

どれが真実か否かは誰にも分からない



記憶は時として
過去からの後悔を運び
時として過去を美化していく



呵責の過去であれ
都合良くオブラートに包まれた過去であれ
生きている今は未だ過去に真実は求めまい・・・




























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