ミ ラ イ







小学生の頃
ジュール・ベルヌの
「海底2万マイル」「月世界旅行」等を読んで
空想の世界に胸を躍らせました

ジュール・ベルヌは19世紀後半に
既に
潜水艦やロケットを小説の中に登場させていたのです


同じ小学生の頃
もう一つ私の胸を躍らせていたのは
手塚治虫の「鉄腕アトム」でした

アトムは「鉄人28号」のように
人間に操縦をされるのではなく
自分の意思を持って人間の為に悪と戦いました


ホバークラフトのように空中を走る車
摩天楼のビル群
コンピューターで制御された都市
ロボットのお手伝いさん
隣町にバスで出掛けるような気分で行く宇宙旅行

アトムのいる未来に私は心を躍らせ胸を弾ませました


しかし、アトムは
それまでの子供向けのマンガとは違っていました

アトムはロボットでありながら
思考回路を持つが故に
時には人間とロボットの狭間で悩みもしたのです

最終話では
アトムは自分の意志で
人類を救う為に身を投げ打って死んでいきました

(「死んで」と言う表現が正しいのかは分かりませんが)


子供向けのマンガでありながら
一方で手塚治虫はアトムを通して
社会への警鐘を鳴らしていたのだと思います



20世紀の半ば
軍事目的で潜水艦は現実の物となり
20世紀も後半に入ると
同じく軍事目的で作られたミサイルが基になり
その後、人類は宇宙に人間を送れるようになりました


やがてパソコンは
科学者や専門家だけの物から
一般家庭にも普及をしだし
21世紀に入ると
誰もが家にいながら
世界中の情報を
リアルタイムで得られるようになったのです

今では小学生や中学生までもが
携帯電話やスマートフォンを普通に持つようになり
メールやブログも
決して一部の人の為の物では無くなりました

アトムとまではいきませんが
二足歩行ロボットが出現し
もうすぐ宇宙ステーションが現実の物となります

ジュール・ベルヌや手塚治虫が描いた未来が
徐々に現実に近づいてきているのです


21世紀に入って10年以上が経ちました

科学や技術、医学は
目ざましく進歩を続けてはいますが
未だに交通事故で亡くなる人は後を絶ちません

交通事故で亡くなる人以上の自殺者がいます

争い事は今も尚、世界中で続いています

日本では飽食の時代と言われている中
世界中では飢餓で苦しんでいる人がたくさんいます

癌も未だに完治出来ていません
それどころか
毎年のように新しい病気が出てきています

親が子供を平気で虐待したり殺したりします

子供が親を殺します
兄弟で殺し合う事も珍しくはありません

短絡的に、或いは衝動的に
人間が人間を傷付け殺してしまいます

ゲームのように
自分の命をリセットしてしまいます


大人になりきれない親達は
理不尽に学校にクレームを付け
先生は毅然とした対応を出来ないでいます

大人は責任を取りません

官僚や政治家や企業家は己の利益・保身のみを追求し
倫理や道徳は
何処かにお座なりにされているようにも思えます

しかも、問題の解決は全て先送りです

それらを見ている子供や若者は
未来どころか現実の今にさえ希望を失くしています

刹那的に今に拘るあまり
未来の事を想像すらしようとはしません


豊かさと引き換えに失くしたモノは余りに多いのです


昨今、世界中で起こっている大災害を
”人類への警鐘”と言う人がいます

警鐘と言うには
どれもあまりに被害は大き過ぎます

その自然の猛威は
手を変え品を変えては
毎年のように次々と人間に襲いかかるけど
人間には対抗する術もありません

ただ嘆き逃げ惑うだけです


人間は
自分達では制御できないモノに頼り切っています

いや
人間が一番制御出来ないのは
むしろ人間自身なのかも知れません



ジュール・ベルヌや手塚治虫が描いた未来は
今、何処に行こうとしているのでしょうか・・・









































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