未来に行ける機械と過去に戻れる機械








「未来に行ける機械と過去に戻れる機械
 
 もし
 1台だけ手に入るとしたら
 
 あなたが欲しいのはどっち?
 
 ただし
 どちらも行ったきりで
 
 ”ここ”に戻って来る事は出来ません
 
 そして
 どちらも1人乗りです」

 
 
 
 
 
A「そうだな〜 俺はやっぱり未来だな」
 
B「どうして?」
 
A「だってさ、過去はもう知っているじゃない?
  未来の事はまだ誰も知らないんだからね。
  それなら未来を見てみたいじゃないか」
 
B「ねぇ、未来ってどのくらい未来に行きたいの?
  自分の老後が見たいの?」

 
A「そうだなぁ〜
  確かに、自分の老後は見てみたいけど
  でも、それは止めておくよ」
   
B「どうして?」
 
A「だって、どうなってるか分からないじゃないか。
  幸せな老後なら良いけど
  もしかしたら
  何処かで野垂れ死んでいるかもしれないだろ?」
 
B「まぁね」
 
A「そんなのを見て
  生きる気力が無くなったら困るしな。
  それならいっそ
  ずっと何百年も後の未来を見てみたいな」
 
B「でも、何百年後なんて
  余計どうなっているか分からないじゃない?
  映画で見るような
  超近代的な都市になってるとは限らないよ」

 
A「猿の惑星みたいになってるかも知れないって?」
 
B「それはどうか分からないけど
  でも、人類は地球を捨てて
  他の惑星に移住してたりして」

 
A「それなら、俺が地球の王様じゃん」
 
B「国王1人しかいないけどね」
 
A「まぁ、確かにそれじゃつまらんな」
 
B「未来ってさ、きっと・・・」
 
A「きっと?」
 
B「きっと、未来が分からないからこそ
  今を頑張って生きようと思えるんだよ」

 
A「そりゃ、そうだけど。
  でも、それじゃ
  端っから質問に答えにならないじゃん。
  じゃ、過去派のお前としてはどうなんだ?
  そんなに過去が良いのか?」
 
B「いや、別に過去派って訳じゃないけどね。
  でも、そうだなぁ〜
  今の記憶のまま過去に戻れて
  もし、アノ時の選択を
  違う答えでやり直したら
  どうなるんだろうとは思うな」

 
A「アノ時の選択? 意味あり気だな」
 
B「そう思う事ってない?
  今までだって
  色々な場面で色々な選択をしてきたでしょ?」

 
A「まぁね、受験、就職、転職、結婚・・・
  離婚はまだした事がないけどな」
 
B「あはは、そしたら離婚してから
  タイムマシンに乗り込む?
  どうせ1人乗りらしいし」

 
A「ん〜」
 
B「おいおい、本気で悩まないでよ!」
 
A「あはは」
 
B「思うんだけどね」
 
A「何?」
 
B「未来ってやっぱり分からない方が良いんだよ」
 
A「うん、それで?」
 
B「でも・・・過去なら
  やり直したいと思う時がある・・・」

 
A「俺はごめんだな」
 
B「どうして? 後悔した事はないの?」
 
A「いや、後悔なんて掃いて捨てるほどあるさ」
 
B「じゃ、その後悔をやり直してみたくない?」
 
A「だってさ、考えてもみろよ。
  やり直したってそれでどうなる?」
 
B「今と違う自分になれるよ」
 
A「そうかな?
  だっていつに戻るかにも拠るけどさ
  また何十年もやり直さなきゃならないんだよ。
  その方が耐えられないな。
  お前が言う未来と同じでさ
  やり直した方が必ずしも幸せになれるって
  そんな保証はないだろ?
  それに、質問にもあるけど
  行ったらもう”ここ”には戻れないんだよ。
  やり直した選択が
  結果、どんなにつまらなくても
  『やっぱり止めた』って出来ないんだよ。
  それなら、過去をやり直すより
  今、これからの生き方を
  考えた方が良いんじゃないか?」
 
B「でも、それじゃ質問の答えにはならないよ」
 
A「答え?」
 
B「うん、
  だって”どっちが良い?”って質問でしょ?」

 
A「そうだけどね。
  でも、
  ”どっち?”って質問の答えにはさ
  ”どっちもいらない”
  って答えもあるんじゃないか?」
 
B「それじゃ、質問する意味がないんじゃない?」
 
A「いや、質問に意味はあるよ。
  だって、今
  俺達は色々考えたじゃない?
  どっちが良いんだろうってさ。
  そして、”どっちもいらない”って
  答えにたどり着いた。
  思ったんだけどさ
  それが俺達が答える”意味”だよ。
  つまり、大事なのは
  未来でも過去でもなくて”今”なんだよ。
  そして、これからをどう生きるかと言う事。
  安易に未来に逃げるんでもなく
  過去を悔むのでもなくてね。
  多分、
  それが質問の求めていた答えだと思うよ」






































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