ニュース・ソース








ずっと携帯を見ていた長女が突然騒ぎ出した

「嘘ぉ〜〜〜!? え〜 マジ?」

「何だよ、いきなり。 何がどうしたって?」

「ねぇ、**ってホント?」

「何が?」

「いや、今携帯を見てたらこんな話題が載っていてさ。
 信じられない・・・でも、そうなのかなぁ〜」

「で? そのニュースソースって何?」

「この書き込みなんだけどさ」

そう言って
長女は携帯に表示されている書き込みを私に見せた



ブログの書き込みだとか掲示板だとか
今ではツイッターが多いのかも知れないけど
ネットの世界では毎日、毎日様々な情報が飛び交っている


そして、それを読んだ人間の口コミが
また、別なルートで流れて
そしてそのうちには
情報だけがどんどん独り歩きを始め
また次の読者を求めてネットの海を拡がっていく

やがて、世の中は嘘か本当か分からない情報で溢れていく


問題はそのニュースの出所なのだが
読んでいる方はそんな事よりも
ニュースの中身に既に心は踊ってしまっている

しかも
そのニュースは途中で色々な着せ替えをさせられて
尻尾やヒレまで付けられて
数時間のうちには
最初の形など影も形も無くなってしまっていたとしても
誰にもその事は分からない



「お前さ。 その書き込みってオリジナル?」

「えっ? なんで?」

「なんでじゃないでしょ?
 それって誰かの書き込みでしょ?
 その人だって
 誰かの書き込みを見て書いているんじゃないの?」

「ん〜 どうなんだろ?」

「どうしてそれが本当の事だと思う?」

「だって、書いているから」

「じゃ、ネットで書かれている事は全部真実かい?」

「分からないけど・・・」

「そんな分からないものにいちいち一喜一憂してる訳?」

「だって、すごいニュースだよ」

「でも、それは本当の事だって言えるの?」

「・・・」

「別に新聞やテレビのニュースが
 必ず真実だけを書いている訳じゃないとは思うよ。
 事実が確認できていない内に
 ニュースとして流される事だってあるだろうし
 記者の勘違いや誤解だってあるかも知れない。
 情報のコントロールとまでは言わないけど
 ニュースキャスターの言い方ひとつで
 視聴者への伝わり方が変わる事だってある。
 でも、それらはテレビ局や新聞社の看板の元で
 責任を持ってニュースとして発表されている訳だろ?
 だから
 間違っていたら後で謝罪して訂正される事もあるしさ。
 だから
 見ている方も信頼が出来るんだよ。
 でも、その書き込みは誰が責任を持ってると思う?」

「書いている人じゃないの?」

「そんなさ。 ネット上で匿名で書いている人が
 自分の書いた事に責任を持つと思う?
 なら、どうして本名で書かないの?」

「だからそれは
 誰かに炎上させられたら困るからじゃないの?」

「仮に炎上させられたとしたって
 それが事実なら誰が文句を言ったって貫けば良いじゃん?
 でも、そんな気概じゃないよね?
 匿名だから
 面白可笑しく取り上げてるって事も多いんじゃない?
 お父さんだって、自分でブログも書いているし
 他人の話だって読むけど
 それはその中の話だと思って読んでいるよ。
 もちろん、気になった事柄があれば自分で調べるけどね」

「調べるってウィキペディアじゃないの?」

「もちろん、それも読むけど
 あれって結構曖昧な事もあるからね。
 他の記事も検索をして、いくつも読んだり調べたりして
 それで総合的に判断はしているつもりだよ」



良くも悪くも口コミの力って凄いと思う

ただ、怖いのは事実が確認されないうちに
話だけがどんどん一人歩きを始める事だ

そして、多くの若者が
(今は若者だけじゃないかも知れないが?)
それらを事実としてすぐに信じてしまう事だ
 

アラブの春もひとつのツイッターから拡がったと言う

それだけの力があるものを
誰もが簡単に使えると言う危うさ

ひとつの言葉に乗じた時の勢いを止める術は
ただ時間の経過しか無い

仮に、冷静な誰かが待ったをかけたとしても
数百万の勢いの前では波に消されて流されてしまうだけだ

実際
何かの反対運動や逆に推進運動を扇動する道具としても
ツイッターや掲示板は使われているんだとか


誰もが簡単に情報を”発信”出来ると言う時代
それだけに”言葉”を読み解く力も相応に求められている








































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