” 似 て る ”







もしかして
寂しさと片想いって似てるのかもね


「どう言う事だい?」

だってさ
切ない想いをするのはいつも自分だけだし
そして
いつかは誰かに自分を分かって欲しいって願ってる


「なるほど。
 その意味では確かに似ているかも知れないね。
 そして、どっちも自分の側の問題だしね」

そうなんだ
そこから一歩を踏み出さないと
どちらも解決しない
自分独りで悶々としているだけじゃね


「そうだね。
 その理屈だと
 優しさとワガママも似ているのかもよ。
 だって
 それって自分じゃ案外気がついていないものだよ。
 相手がそう感じているだけで
 自分がそう思っている訳じゃないもの」

うん、そうかも知れない
優しさにしろ、ワガママにしろ
知らないうちに相手に自分を押し付けている
そんな事もあるだろうな


「難しいところだけどね。
 でも、相手がある事だけに
 その判断は相手に委ねなきゃならない」

そうすると
もしかしてだけどね
正直者と嘘つきも似ているって事になるよね


「正直者と嘘つき?」

うん、相手に正直に言った言葉が
望まないにしろ
相手を傷つけてしまう事ってあるよね
そして
相手の事を思ってつく嘘もあるし
ほら、嘘も方便ってね
つまり
正直者がいつも正しいとは限らないし
嘘つきがいつも悪者だとは限らないって事でしょ?


「なるほどね。
 一見、対極にいる人が実は同じ人だったりする訳だ」

そう
対人関係ってさ
相手によって変わるものだからね
自分の態度とか行動って
相手によって変わるでしょ?
最初はみんなに同じように接しようと思っていても
相手のリアクションや
自分に対する態度でだんだん自分も変わるよね


「そうだね。
 そうしなきゃやってられないからなぁ〜
 誰もが聖人君子って訳じゃないしね」

うん、相手によって関わり方も違ってくる
それは仕方の無い事だよ


「かもね。
 で、どうした?
 急にそんな事を言い出して。
 何かあったのかい?」

そう言う訳じゃないけどね
ただ、似てるなぁ〜って思ってさ
君と僕が


「お前と?」

ん、過去の君と未来の僕
過去はもう変えられないだろ?
未来はもしかしたら変えられるかも知れないけど
どのみち、選ぶ道はひとつだとしたら
それは変えられないのと同じさ


「いや、それは違うな」

違うって?
どうしてだい?


「お前は過去は変えられないと言った。
 うん、確かにそれはそうだ。
 だけど、未来はお前が選ぶ事が出来るだろ?
 選ぶ道はひとつかも知れないけど
 その選び方で未来は変わるはずさ。
 違うかい?」

それはそうだけど・・・
でも、どんな選択をしたって
それがどんな結果になっても
やり直す事は出来ないよね?
それは過去が変えられないと言うのと
同じ意味なんじゃないかな


「いいや、全く違うよ」

違う?

「あぁ、違う。
 過去の俺がいるから今のお前がいて
 そして、未来のお前がいる。
 つまり、それだけ経験をしているって事さ。
 何もいきなり
 生まれたてのお前が選択をする訳じゃない。
 過去の俺を信じろよ。
 そしたら、ちゃんとした選択が出来るはずさ。
 選ぶ前から後悔する事を考えたって仕方ないだろ?」

そっか・・・そうだね
僕と君は似ていて当たり前だけど
だからって
同じでいる必要はないんだものね
君がした後悔を僕は知っている
だから
後悔しない方法も分かっている
それだけでも随分違うよね


「あぁ、そうさ。
 俺はもうお前をただ見てるしか出来ないけど
 お前は前を向いて行動出来る。
 それがお前だよ」




























inserted by FC2 system