それでも日本の親父はたくましく生きていくのだ!








母の日よりも断然影の薄い父の日

例えば
母の日にはカーネーションを贈ります

では
父の日には何の花を贈るか知っていますか?

一応、世間的には「黄色いバラ」となっていますが
意外と知らない人が多いようで
母の日のカーネーションに比べて
どうして浸透しないんでしょう?

「親父に花なんか似あわないよ」

「どうせ喜ばないんじゃない?」

どうも
本人の知らないところで
勝手に親父像を作られているきらいがありますが

それはそのまま家庭の中での
ポジションを表しているのかも知れません




結婚をする時

「新婚旅行は私が決めて良い?」

嬉しそうな笑顔に
つい

「あぁ、もちろんだよ。
 君の好きなように決めたら良いさ」


”君の好きなように決めたら良いさ”

それが
その後の全てを決めるひと言になっていたなんて・・・




娘が産まれた時

それはもう嬉しくて嬉しくて

かけがいの無い宝物があるとしたら
まさにこれなんだって思ったものです

「子供は目に入れても痛くない」

何をバカな事を言ってるんだ?

独身の頃はそう思ってましたが
産まれて来た娘を見ていると
本当にそう思えたんです


「ごめん、
 ワイシャツにアイロンをかけてないわ」

「良いさ、そのくらい。
 君も娘の授乳だなんだで
 夜もあまり眠れてないんだろう?
 ワイシャツくらい
 どうせ着てたら皺になるんだから全然構わないよ」


優しさのつもりでした

でも
いつまでもずっとなんてつもりではありませんでしたが

いつか覆らない既成事実になりました


アイロンですか?

幼稚園に上がった娘の
ハンカチと給食セットのエプロンだけは
毎日かけていましたよ




娘が小学校に上がった時

「これからお金もかかるようになるわね。
 辛抱しなきゃね。
 そうそう!
 あなたの小遣いね。
 今月から2万円でお願いね」

「えっ? 2万円?
 それって、タバコ代は?
 昼の弁当は持っていくとして
 500mlペットのお茶代は別だよね?」

「そんな訳ないでしょ!
 全部込みよ!
 でも、しばらくの辛抱なんだからガマンしてよ!
 貯金もしなきゃならないんだから」


あれから10数年

消費税は3%から5%に上がって
タバコ代はとうとう410円に値上がりしました

”しばらく”っていったい何年なんでしょうか?

しかも、貯金の話はどうなりました?

いつも
「お金が無い!」って騒いでますが
その割にあなた方のおやつだけは
いつも豊富にストックしてますよね?

しかも
知らないうちに
何故が家の中にモノは増えていたりして・・・




娘が中学に上がった年の秋

景気の悪化と共に
会社にも嵐が吹き荒れ
それまでは他人事だと思っていた私の身にも
リストラの風が吹きました

40代後半でのハローワーク通い

なんだか自分が惨めでしたが
それでも家族の為に
もう一度頑張るんだ! って

そりゃ、その歳になると
正社員の仕事なんてそう簡単にあるはずもありません

あったとしても
給料が20万円ももらえたら良い方でした

「月に20万円の仕事でも良いか?」

「仕方ないよね。
 仕事につけるだけマシだもの。
 頑張ってやりくりするわ」

確か、あの時
君はそう言ってましたよね?


それからやっと見つけた仕事は
月の手取りが30万円ちょっとの仕事でした

ボーナスだって60万円はもらえました


初めてのボーナスの日
君が言った言葉は今でも忘れられません

「やっと人並みになったわね」


次の次の年
景気がまた悪くなり会社の業績も悪くなり
60万円だったボーナスが40万円になりました

帰宅すると君はひと言も言わず不機嫌な顔でした

私が2階で着替えて下に降りると
待ち構えていたように君は言いました

「何これ? どうするのよ!
 これじゃ、支払いをしたらパーじゃない!」


”あの時”の言葉は何処に行ったんでしょう?

ボーナスが下がって一番ショックだったのは
働いている私自身だったんですよ




浮き沈みがあるのは世の常です

そこそこ会社も持ち直し
給料やボーナスも
また君が言うところの”人並み”程度には戻りました


「悪い、明日会社の飲み会なんだ。
 会費出してくれる?」

いつも恐る恐る君の顔色を伺いながら
君の機嫌の良さそうなタイミングを見払ってお願いをします

「嫌よ、どうせ好きで飲みに行くんでしょ?
 勝手に行けば?」

「そんな訳無いだろ!
 会社の飲み会なんだから
 付き合わない訳にはいかないだろ?」

「どうだかね」

「じゃ、俺が会社の中で
 付き合いの悪い奴ってなっても良いんだ?
 だいたい、会社あっての生活だろ?
 だったら、少しは俺の立場も分かってくれよ」

「じゃ、良いわ。
 1次会は出すけど2次会は知らないからね。
 行きたいなら勝手にどうぞ!」


娘にはいつも新しい洋服
靴も汚れていたらすぐに買いに行きます

「カバン、そろそろ買い換えてよ」

娘が言えば君はすぐにOKします


私のスーツは一番新しいのが2年前に買った奴です
ネクタイもだいぶヨレヨレになってきています

皮靴はこの前
雨が降ったら滲みて靴下が濡れました


でも
君は私が今日どんなスーツを着て
どのネクタイをしていたかなんて
まるで興味はないみたいですね

多分、訊いても君は答えられないでしょうね?

まぁ、私もあえて訊いたりはしませんが




母の日には娘が
可愛いリボンを結んだ
チョコレートをプレゼントしていました

先日の父の日

娘は部活の仲間達とカラオケに行くって言って
私が起きた時にはもう家にいませんでした

夜になって
娘が帰宅しましたが

「やばーい! 宿題やらなきゃ!」

さっさと自分の部屋に入って行きました


まぁ、娘に脛をかじられるのが親父の仕事です

それ以上、望んだら罰が当たるってものです




風が吹いたって
雨が降ったって
雪が積もったって

嵐になっても
地震がきたって

それでも命を懸けて家族を守る

それが親父なのです


自分がどうでも
いや、例え家の中で腹の立つ事があったって
自分を繕ってでも
笑顔で今日も仕事に行くのです


その場を和ませようと
得意のギャグを連発して
それで逆に家族に冷ややかな視線を浴びようと

例え
汚い物扱いされて
私の洗濯物を棒で引っ掛けて洗濯機に入れられようと

加齢臭だと鼻を塞がれようが


例え
「お父さんの後にトイレに入るのは嫌!」
なんて愛する娘に言われようが

「お前ら、誰の陰で飯が食えてると思ってんだ!」
なんて、そんな野暮な事は言いません


例え
会社で嫌な事があっても
例え
家が安らぎの場所では無くなっていたって
例え
酒の肴が溜め息だけだったとしても

それでも親父は今日も笑って仕事に行くのです



家族の為に、会社の為に

それでも日本の親父はたくましく生きていくのだ!







おっしゃ、決まったぜぃ!


と、言うところで
今日も無事に話がまとまりました


さぁて、それじゃ寝るとしますか




あっ、そうそう!

先日の父の日の話なんですがね


実はあれには続きがありまして・・・


夜のスポーツニュースを見終わって
2階の寝室に入ると
私の布団の上に何か置いてあったんですよ


最近は私のいない時
良く、猫が私の布団の上で寝ているので
私にはピンときました

「また猫が何処からが紙袋を持ってきたんだな?」

猫は紙袋が大好きですからね

「きっとまた、ジャレてたんだな」

そう思ってたんです


「全くもう!」

そう思いながら紙袋をどけようとすると

「アレッ?」

そうなんです

何か重たいんです

「なんだ?」

紙袋を覗くと何か入っていました


「ん? なんだこれ?」

見ると

【 ストレス解消の肉球(グミ)】


そうです

猫の肉球の形をしたお菓子のグミでした

「あはは、なんのこっちゃ?」


もう一度、紙袋を覗くと
何かカードが入っていました

『おとうさん、いつもありがとう♪ 娘より』


こう言うのを”不意打ち”って言うんですかね?

不覚にもウルウルきちゃいましたよ


そうだな

きっと、この為に俺は頑張ってるんだよな


そして多分

日本中の親父達もね・・・





《 夢乃注 》

この話は全てフィクションであり
日本に実在する
いかなる家庭をもモデルにはしていません

もちろん我が家の話でもありません

(我が家の名誉の為に一応言っておきますが(笑))


そしてもちろん
この話を読んで「ドキッ」として
思わず胸に手を当てた
そこのあなたの家庭の話でもありません

ご安心を(笑)


































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