丁寧過ぎる話し方に思わずイラッとくる時









友人が言っていました

「いやぁ〜 何が腹立つって
 スピード違反で捕まった時の
 あの警官のニコニコしながら言う
 やたら丁寧な話し方ほど
 腹が立つもんは無いよな!」

「えっ? どんな感じなの?
 俺は捕まった事無いから分からないけど」

「あ〜! お前も腹立つ奴っちゃな!」

「いや、すまん、すまん(笑)
 で? どんな感じなの?」



友人が説明をしてくれた一部始終です



時間は夜の8時過ぎ

片側2車線のバイパスは
昼間に比べると交通量も少なく
私は部活が終わった長女を迎えに行こうと
次女を助手席に乗せてバイパスを軽快に走っていました

少し走ると前方に少し遅めの車が2台併走しています

「おーい、2車線を同じスピードで走るなよ〜
 しかも、遅いし」

それが聴こえた訳ではないのでしょうが
丁度右カーブに差し掛かった時に
右車線の車が少し先行しました

「良し、ここだ!」

カーブが終わって直線になると
左車線の車が遅れたのをサイドミラーで確認をし
左後方の安全を十分に確保した後で
右車線を走っていた私はウインカーを上げ
左車線にレーンを変えアクセルを踏み出しました

その時です
前方の路肩にスモールランプを点けて
こちらに向かって停車している車を視認しました

「あれっ? まさか?」

と思い
ブレーキを踏んだその瞬間

その車は赤色灯を回しました


「しまった! やってしまったか!?」

バックミラーで確認をすると
その車はUターンをしてこちらに迫ってきます

「ここは、口笛でも吹いて知らん顔してるべか」

もちろん、そんな冗談が通じる相手ではありません


パトカーは私の車の後ろに付くと
パッシングをして停止の合図を送ってきました


「お父さん、どうしたの?」

「いやぁ〜 捕まってしまったよ。
 参ったなぁ〜」

「どうなるの?」

「今晩はブタ箱かな」

「ブタ箱って何?」

「あはは、いや、未だ知らなくて良いよ。
 そうだ! お前、泣け!
 泣いて、お腹が痛いとか・・頭が悪いとか叫んでくれよ」

「なんでさ? それより、頭が悪いって何?」

「いや、例えばだよ。
 もしかしたら、警官が同情をしてくれてだな・・・」

「お父さん、ひどい!」


いやいや、次女よ、ごめん(笑)
今はお父さんが全面的に悪かったよ。

ちなみにブタ箱ってね
留置場って言って
逮捕されたらとりあえず入れられる所さ

おっと
ここでそんな余計な説明をしている場合じゃ無かったか



車を道路脇に停車させると
おもむろに
警官が1人パトカーから降りてきて

(ドアミラー越しに見た警官は
 嬉しそうにスキップをしているようにも見えた)

そして、運転席の横まで来ると
覗きこむように一瞥した後で窓をノックした

(助手席に乗ってるのは私の女じゃなくて娘だよ
 残念だったな(笑))


私は窓を少し開けると
その警官に向かって

「どうしました?」

努めて冷静を装って訊ねました

すると警官は私が言うのも聴かず
とびっきりの営業スマイルで(?)

「旦那さん、急いでるところ、ごめんなさいね。
 ちょっとね、スピードが出てたんですよね。
 パトカーで測ってますから
 ちょっとこっちに来て確認をしてもらえますかね」

「えー? そんなに出てましたか?
 そんなはずは無いんだけど」

「えぇ、少しだけ出てましたね。
 とりあえず、こちらに来て確認をしてくれませんか?」


渋々、後ろのパトカーのところまで行った私

ついて来た警官が
パトカーの後ろのドアを開けてくれて

「旦那さん、乗る時に頭をドアにぶつけないように
 気をつけてくださいね」


『はいはい、ご丁寧にどうも』

そう言いかけたけど
そこは大人の私

ゴネて時間を潰すのも勿体ないし
何しろ、長女を迎えに行く途中でもあったので
ここはなるべく大人しくして
早く解放されるようにするのが得策


パトカーの後ろに乗り込むと
運転席に乗っていた警官が
レーダーで測った数字の記載したレシートを見せながら
私に説明を始めました

「旦那さん、これパトカーで測ったやつなんですけど
 78kmって出てるでしょ?
 ここね、60km制限なんですよ」

そこへすかさず
助手席に乗り込んださっきの警官が付け足す

「旦那さん、さっき追い越したでしょ?
 その分、ちょっとスピードが出ちゃったね」

「ここね、60km制限なんですよね」

「ちょっと先に出た分、スピードが出ちゃったんだね」

「ここに78kmって出てるでしょ?」

「ちょっとなんだけどね」


私が何か言おうとするのも聞かずに
2人の警官が交互にたたみかける

ニコニコ楽しそうに

しかも、口調は恐ろしいくらい丁寧口調で・・・



”ちょっとなら今回は厳重注意で許してくれよ

 だいたい、車が前後に何台も走っていたのに
 その数字が私の車だって証拠は何処にあるんだ?

 もしかしたら
 右側を走っていた車のかも知れないし
 後ろの車のかもしれないじゃん

 写真でも一緒に撮っているなら見せてくれよ

 第一、そのレーダーの精度って
 どのくらいなんだ?

 って、言うか
 何度も私を「旦那さん、旦那さん」って言うけど
 あんたは私の何なんだ?”


2人の警官が私を納得させるようにか
交互に「これでもか」って言うくらい
繰り返しご丁寧に説明を続ける中で
私も負けじと
警官に向かって投げつけたい言葉を
何度も頭の中で繰り返していた


だけど、相手は交通機動隊の
しかも、どう見てもベテランの警官

(百戦錬磨かどうかは知らないけど)

しかも、相手は2人でこっちは1人

(これを専門用語で【多勢に無勢】と言います)

どう考えても形勢は圧倒的にこっちが不利です


加えて
ここで違反を認めず
ゴネ続けた場合

例えば、レシートを見せてもらう振りをして
それを食べて証拠隠滅でも図ろうものなら
公務執行妨害で最悪逮捕の危険もあります

そうなると

『もし、そうなったら会社ってクビかなぁ〜?』

そんな事も頭を巡ります


助手席の警官の言葉が続きます

「旦那さん、ちょっと免許証を見せてくださいね」

私が免許証を差し出すと

「旦那さん、O町なの?
 これから帰るところですか?」

「いや、部活が終わった娘を迎えにね」

(帰るんなら方向は逆だろ。住所を見りゃ分かるだろ?)

「そうだったんですか。 それはご苦労さまです」

(あんたに”ご苦労さま”って言われる筋合いはねぇよ)


本当は”それは残念だったね”とでも言いたかったのか?

この時点で私のココロは
さっきからの警官の話し方にかなりイラッときていました


「旦那さん、何をやっている人ですか」

「会社員です」

「旦那さん、会社は何処?」

「**です(そんな個人情報いるのか?)」

「旦那さん、家か携帯の番号を教えてくれますか?」

「0155−**−****(携帯なんか教えるか!)」


「旦那さん、それじゃコレを確認してください。
 今回は18kmオーバーと言う事で
 反則金は12000円になります。
 でも、点数は1点ですからね」

(なんか”毎度あり〜♪”って聴こえるんだけど)
       ↑
   さらにイラッときてる私

隣の警官が続ける

「旦那さん、ゴールド免許なんですね?」

「はい(そうだよ。善良な市民を捕まえて嬉しい?)」

「次回の更新は残念ながら”青”になっちゃいますね。
 でも、これで3カ月違反をしなかったら
 点数は戻りますからね。
 それで終われば、次回も5年の更新で出来ますから」

(なんか、ずいぶん嬉しそうな話し方だね?)


「旦那さん、それじゃ確認をしたら
 ここに署名をしてくれますか?
 続け字じゃなくて楷書でお願いしますね」

「はい(かなりムスッとしながら)」

「はい、ありがとうございます。
 旦那さん、印鑑は持っていますか?」

「いえ(いつも印鑑を持ってる奴っているのか?)」

「じゃあね、左のひと先指に朱肉をつけて
 ここに拇印を押してくれますか?」

「サインでも良いですか?」

「いや、それは困るんですよね。
 ここは日本ですから、印鑑か拇印が必要なんですよ」

「でも、拇印ってセンシティブ情報にならないの?」

「いやぁ、ならないんじゃないですか?
 捺印の代わりですから」

(それは知っての上で訊いたんだけど)


私が渋々、拇印を押すと

「はい、ありがとうございます。
 ではこれが反則金の納付書になりますね。
 *月*日までに郵便局か銀行で
 振り込みをお願いしますね。
 振込手数料はかかりませんからね」

助手席に乗っていた警官が外に出て
後ろのドアを開けてくれました

用が済んだからとっとと消えろって事かい?
今夜の”ノルマ”は後いくらなんだい?

「じゃ、旦那さん
 夜も遅いから気を点けて走って下さいね」

『気をつけなきゃならないのは
 パトカーがいるからだろ?』

と、言いかけた言葉を飲み込んで

「はい。それじゃ」



と、まぁ〜 こんな調子だったようです

文字にすると分かり難いかも知れませんが
本当にこれでもかと言うくらいの
愛想の良い丁寧な話し方で
それがいっそう腹立たしく悔しかったようです

いっそ
怒鳴り散らしてくれた方が
こちらも闘争心が燃えるってもんです

(だから、それがあるから
 余計に丁寧な話し方をしてるんでしょうが(笑))

しかも、もっと悔しかったのは
18kmオーバーと言う違反速度

これが30kmオーバーとか
50kmオーバーなら潔く罪を認めるんですが
18kmオーバーと言うのも微妙です

都市伝説(?)によると
15kmオーバーまでは
”交通の流れ”と言う事で捕まらないのだとか?

後、3kmかぁ・・・(泣)
     ↑
  もしかして、懲りてない?(笑)


ちなみに
娘さんを迎えに行っての帰り道
また、そこの道路を走っていたら
同じような場所で他の車も
今、まさに捕まっていたそうで
その捕まっていた車に
やたらと親近感が湧いたそうです

(おぉ、同士よ!(笑))


あっ、これはあくまで私の友人の話ですからね

ねぇ、夢乃クン?

































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