誰かではない君と何処かではないここで









「いつか
 何処かで誰かと出会って恋をして
 でもたぶん
 そんなにすんなりともいかなくて
 出会ったり別れたりを繰り返しながら
 それでもいつか
 何番目かの誰かと結婚するんだろうな。」

そんなことを漠然と思い描いていた若い頃。

今、考えたらきっと
大人の恋も知らない幼い想いだったのかも知れない。


けれど現実も大概はそんなもので
その誰かが現れて恋に落ち
そして別れて
しばしの傷心が癒える頃には
また誰かと出会って・・・

いや、傷心を癒す為に
別な誰かを探し求めていたのかもしれない。

誰でも良い誰かを?

ともかく
そんなことを幾度となく繰り返しながら
ただ歳を重ねていった。


誰かと別れるたびに

「誰かにとってはきっと
 僕も単なる<誰か>だったんだろう。」

そんな風に自分に言い聞かせていた。


君に初めて出会った時
何番目かの誰かが誰かではなく
僕は探していた<誰か>を見つけたと思った。

誰かではない君と
何処かではないここで生きていきたいと思った。

三年間の想い出は数えきれない。
一緒に過ごした時間、一緒に過ごした場所。
そのどれもが僕にとっては特別だったし
君と会えない時間さえも愛おしく感じていた。

巡る季節の順番はいつも同じでも
君がいるだけで
四つの季節はいつもの季節より輝いていた。

そして別れた後の四つの季節は
また前と同じ
ただ繰り返すだけの季節に戻っていった。


今、僕は君ではない誰かと出会い結婚をして
ここではない
君の知らない町で暮らしている。

その誰かはやはり何番目かの誰かなのか?
或いはもしかして最後の誰かなのか?

それは解らないけど
それが君でないのなら
その誰かが誰だろうとたいして違いはないのだと思う。


とある季節の変わり目に
何かに誘われるように久し振りに訪れたこの町。


もうすぐ桜の季節がくる。
あれから何度目の春になるだろう?

誰かではない君と何処かではないここで見た桜の花は
切ないくらい清らかで
舞い落ちる一片の花弁さえもかけがえの無い美しさに思えた。

儚ささえも永遠と思えた日。
その先に見ていたものは確かに二人同じだったよね?


繰り返す季節の境目は君を思い出すための一瞬。
その一瞬を人は刹那と呼ぶのだろうか。








































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