ダイヤリー








遠い記憶の中で
君が微笑んでいる

花柄のワンピースは
二十歳のプレゼント


結んだ黄色のリボン
麦わらの帽子

かざした風景の向こうで
夏の風がそよいでいた




セピア色の写真
記憶が坂道を上る

カテドラル 異国の空
ポプラ並木と石畳の舗道


君の好きな風景
僕が好きだった街

天窓のある部屋でいつも
夢を語り合った時間




しわだらけの指で
たどるあの日のページ

滲んだ青いインク
表紙の褪せたダイヤリー


途切れたページの
そのから先に君はいない

さよならさえ言えなくて
見送る事も出来なかった




僕の想い出の中で
君は永遠を手に入れた

僕の時計はあの日で止まり
君のいない永遠に迷い込んだ


もしもケンカをして別れたなら
そう、その方が良かった

他の誰かと恋した瞬間に
君を忘れられただろうから




朧に浮かぶ月に誘われ
僕は部屋の窓を開けた

レースのカーテンが
フワリと微かに揺れる


夜風に紛れた君への想いが
また溢れ出す前に

ダイヤリー 静かに閉じて
心の一番奥に仕舞い込む








































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