最後の場面
誰かの声が聴こえた気がして
それは覚えのある懐かしい響き
振り返れば木立を揺らす冬の風が吹いているだけ
立ち止まった僕の目に入ったのは
昔、良く通った馴染みの喫茶店
振り返る事無く店を出た君を見送った最後の場面
ただひとつの真実を絶対と信じていたあの頃
愛する為の嘘 相手を思う故の嘘
今なら許す事もきっと出来るだろう
僕はいったい何を見ていたんだろう
君が笑えばただそれだけで幸せで
素顔の君を一度でも見ようとした事があったろうか?
肌を焼く夏の眩しいあの太陽も
地上を照らせば光と影が出来る
そこだけを見ていたら本当の事さえ見えなくなってしまう
当たり前の事さえも君を許す口実に出来なくて
愛するが故の嘘 傷付けない為の嘘
そんなはずじゃ そう、なかったのに
君の涙の”真実”を見抜けなかった最後の場面
愛する為の嘘 僕を思う故の嘘
若過ぎた事が罪なら少しは救われるけど
胸を刺す冷たい北風に僕は今も立ちすくむ
君の優しい嘘 寂しげな最後の嘘
どれだけ時が流れても僕を許さないで