優 し い 風








開けた放した窓から
夕暮れの優しい風が入ってくる

君は指定席の
ダイニングテーブルのイスに座り
文庫本を読みながら時々クスッと笑う

コーヒーが冷めているのもかまわずに
また1枚 ページをめくる

何度目の春 何度目の秋

僕はこの見慣れた風景が好きだ




「ねぇ、そう言えばね」
言いかけて君を見て微笑んだ

僕は立ちあがって
そっとオーディオのBGMを止めた
耳を澄ませば聴こえてくる君の寝息

読みかけの文庫本を胸に抱いて
どんな夢を君は見てるだろう?

何度目の春 何度目の秋

そこにいてくれるだけで幸せをくれる人




空の色が青から赤に変わる
そんな時間の移ろいさえ愛おしい

僕は窓辺に立って
ぼんやりと窓の下を行き交う人波を
飽きもせずにただずっと見ていた

この街でこうして君と出会った事を
ささやかな奇跡と呼ぼう

何度目の春 何度目の秋

窓を閉めるには風はまだ優しくて


































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