電 話
<ねぇ、泣いても良い?>
携帯が鳴った時
時計は深夜の二時半を回っていた。
いつもこれだ。
こっちが電話をしたって出ないくせに
夜中だろうが早朝だろうが御構い無しに
いつも一方的に電話をしてきて
一方的に喋りまくって
でもって、気が済んだら<バイバイ>
たまには
<こんな時間にゴメン>とかさ、言えよって思う。
まぁ、未だお前に言えた事は無いんだけどさ。
<ねぇ、聴いてるの?>
「あぁ、聴いてるよ」
<何? 今日のタカシは冷たいじゃん>
「ゴメン、まだ寝惚けてるんだ」
<ねぇ、泣いても良い?>
「なんだ? 又、フラレたのか?
しょうがない奴だな。
で? 泣いても良いけどBGMは用意したのか?」
<BGMって?>
「フラレた時の定番曲。
中島みゆきの『うらみます』とかさ。
今、お前が一番聴きたく無い歌だよ」
<そんなの聴いたら死んじゃうよ>
「それじゃ、そうだな・・・
スピッツの『君が想い出になる前に』とか?」
<そんなの聴いたら切なくなるよ>
「何だよ、じゃあさ。
HYの『366日』は?」
<そんなの聴いたら余計に辛くなるよ>
「じゃ、いっそ
ドリカムの『ラブ・ラブ・ラブ』にする?」
<そんなの聴いたら泣いちゃうよ>
「あれっ? 泣きたいんじゃなかったのか?」
<そうだけど・・・>
「何だよ? 変な奴だなぁ〜
それならさ。
素直に『声が聴きたかった』って言えよ」
<そんな事を言ったら負けじゃん>
「何だよ、それ?
どうせ又、失恋をしたんだろ?
なら、ついでに負けちゃえよ。
きっと、楽になるぜ」
<口説いてるの?>
「口説いてやってるんだよ」
<何それ? バカみたい>
「バカじゃなきゃ、お前の相手なんかしてられないよ」
<ねぇ? アタシ、何で電話したんだっけ?>
「俺の声が聴きたかったからだろ?」
<しょってるね>
「どうせ、バカですから」
<変な奴>
「お前には言われたくないけどな」
<でも、スキ>
「お前には言われ・・・えっ?
今、何て言った?」
<何が?>
「何がじゃないよ。今、言ったろ?」
<言ってないよ>
「言った!」
<言ってなぁーい>
「いやいや、言ったでしょ?」
<バカじゃないの?>
「お前、ケンカ売ってるのか?」
<アイシテル>
「やっぱり売ってるんだ?」
<ウフフ>
「えっ? あっ・・なっ、も、もう一度言えよ!」
<言わなぁーい>
「おぉーい!」
いつだって冗談とも本気とも取れない会話。
高校の時からだから
かれこれ十年は続いている事になる。
お前の喜怒哀楽に振り回されるのも
慣れたっちゃ慣れたけど
でも、もうそろそろ
”終わり-Happy End-”にしないか?
「あのさ」