向日葵と月









向日葵は太陽に恋焦がれていた

いつも眩しいその笑顔
誰もを明るくするその陽気さと
包み込むような温かさ

向日葵にとって
太陽に出会って恋をするのは
それはまさに運命だった


向日葵はいつも太陽を追いかけていた

朝の挨拶

「おはよう。ご機嫌いかが?」

そして

「ねぇ、もっとあなたの笑顔を見せて」


太陽が笑顔を振りまくと
鳥達も木も草もいっせいに振り返る

太陽にとっては
向日葵もそんな中のひとつ


それでも向日葵は嬉しかった

太陽がそこにいてくれるだけで
向日葵には幸せだと思えたから


けれど

そんな向日葵の想いなど
太陽は気づくはずもなく

やがて、夕の帳を下しながら
そして次の町へと・・・


残された闇の中で
向日葵は一人、項垂れたまま時を過ごす

切なさに胸を締め付けられて
それでも
どうしようもないくらい太陽が恋しくて

何度も何度も
未だ暗い東の空に向かって
ただ祈るように太陽を待ち焦がれていた


「そんなに俯いたままだと
 涙が堪えきれなくなるよ。
 ほら、もう顔を上げてごらん。
 例え、太陽はいなくても
 この空には
 こんなにも綺麗な星達が輝いているんだよ」

月は優しく向日葵に語りかける

月はいつも
項垂れた向日葵を優しく照らしていたのだ

でも
項垂れたままの向日葵には月は見えていない

いや
むしろ見ようとすらしていないようだった

その声もただ向日葵を切なくさせるだけだった

「もう止めて! 同情ならたくさん!」

そんな向日葵を見ては月は悲しくなってしまう

「僕にもっと
 君に元気を与えられる温かさがあれば。
 僕にもっと
 君を明るく出来る輝きがあれば」

その想いは向日葵には届かない
それでも月は願う


明るい君の笑顔を僕にも見せてください
僕はそれだけで満足です

僕の願いは君の幸せなんだから





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向日葵・・・Sunflowerとも呼ばれるこの花は
太陽を追いかける事からこの名前が付きました

でも実際には

太陽を追いかけるのは
花首の柔らかい若い時だけで
成長をしてからはずっと東を向いていて
その頃にはもう太陽を追いかけないそうです

もしかしたら

いつか向日葵も
夜を優しく照らす月に
気が付く時が来るかもしれませんね





































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