七夕ストーリー 第1話



星 に 願 い を

〜 アンチテーゼな夜に 〜





昔々の話・・・



ある所に
誰もが呆れる程、強欲な爺さんと
誰もが呆れる程、欲の無いお爺さんが住んでいた


七夕の日
強欲爺さんは朝から庭の大きな柳を見て考えていた

「今まで何十年も願いを叶えてもらえなんだ。
 今年こそは何が何でも叶えてもらわねば」

強欲爺さんは次々と
思いつくまま短冊に願いを書いた

書いては短冊を次々と柳の枝に結び、
陽が落ちる頃には
とうとう3mもあろうかと言う柳の枝は
短冊で見えなくなった



欲の無いお爺さんは一番星を見ながら
「今年も綺麗な天の川が見えそうじゃ」
と微笑んだ

結局、
庭の大きな柳の枝には何も短冊を下げなかった



その夜

神様は村人が書いた沢山の短冊を前に
「今年はどの願いを叶えてやろうか…どれどれ」

一枚、一枚丁寧に短冊に書かれた願い事を読み始めた


「どれ、これは村一番の正直者の与平だな。
 何々? そろそろ嫁が欲しいか。よし叶えてやろう。
 次は、村一番の親孝行なお花か
 願いは・・・?
 ほぅ『お母さんの病気が早く治りますように』
 よし叶えてやろう。 次は・・・」

神様は次々と村人の願いを叶えていった


やがて夜半も過ぎた頃
「ふぅ〜さすがに疲れるわい。どれ、後は?」

見るとまだ数えきれない程の短冊が残っていた

「何とした事だ
 もう殆どの村人の願いは叶えたはずじゃが・・・」


良く見ると
残っていたのはどれも強欲爺さんの短冊ばかり
しかも半端な数ではない

「全く、何と強欲爺だ! 絶対叶えてやるものか!」


しかしそこは神様
万が一にも
他の村人の願いが混ざっているのではと思うと
手を抜く訳にもいかなかった

「やれやれ…」

そう呟くと、又一枚一枚丁寧に短冊を読んで行った

「一体何枚書いたんだ?
 これでは朝までには終わらないではないか。
 だが、絶対奴の願いなど叶えんぞ!」

さすがの神様も疲れも有ってか
少し投げやりになって言った



やがて東の空が薄っすらと白み始めた
「いかん、もう夜が明けるではないか!」

神様は焦っていた
だが短冊はまだ何百枚も残っていた

「分かった、分かった、わしの根負けじゃ。
 しょうがない、一つだけ願いを叶えて終わりじゃ」

神様は目を瞑ると一枚の短冊を取った



「次は? 確かもう一人・・」

だが何処を見ても短冊は残っていなかった

そうこうしている内に陽が昇り朝になった
結局、神様が自棄になって取った短冊の願いが叶って
強欲爺さんは大金持ちになった

一方、欲の無いお爺さんの願いは叶わなかった
いや、初めから何も望んでいなかったのだが・・・




昔話やお伽噺であれば
強欲爺さんには罰が当って
正直な欲の無い爺さんには
幸せな結末が待っていると言うものだろう

しかし、現実はと言うと
世の中には理不尽な事が多い

だが、
欲が無ければ叶わない事も確かに有るのだ




































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