鏡 よ 鏡 ・・・




醜い魔女が今夜も鏡に向かっています



鏡よ鏡
世界で一番美しいのは誰?

「それは外見の事? それとも心の事?
 どっちにしても・・・
 少なくともそれは貴女ではありません」




それじゃ誰なの?

「今は言えません」



それじゃ

鏡よ鏡
世界で一番哀しいのは誰?

「哀しい人は知りませんが
 一番憐れな人なら知っています」




それは誰なの?

「今は言えません」



それじゃ

鏡よ鏡
世界で一番バカなのは誰?

「本当に知りたいのですか?」



知りたいわよ!
いったい誰?

「今は言えません」



何でよ?
じゃあ・・・

鏡よ鏡
世界で一番寂しいのは誰?

「鏡に向かって語りかけるしか
 他に友達のいない貴女です」




何ですって?
私に向かっていい度胸ね!!!

分かったわ!
いい?
最後の質問よ

鏡よ鏡
世界で一番私を恐れているのは誰?

「それは私です
 だって、貴女は私を割ろうとしています」




ふん!

そう簡単に割るもんですか!

お前が世界で一番美しいのは私だと言うまで
魔法で醜いモノしか映せなくしてやるわ!
未来永劫よ!!!


いい?

本当に最後の最後の質問よ

鏡よ鏡
世界で一番美しいのは誰?

「それは”私”です」



その瞬間、魔女の魔法は解けて
鏡はキラキラ光りながら天に昇っていきました




残された魔女ですか?

鏡が失くなってしまったのですから
もう醜い自分の顔を見て
癇癪を起こす事もなくなったようです

(めでたし、めでたし)

もっとも
話しかける相手も同時に失くしたので
前より孤独にはなりましたが
それでも
懲りないと言うか
めげないと言うか

今夜も自分相手にブツブツと
独り言だけは言っているみたいです


おやっ?
魔女が耳を塞いでいますね

どうやら
自分の独り言に辟易(ヘキエキ)してきたのでしょう


ようやく鏡の気持ちが分かったようです

ちょっと遅過ぎましたけどね・・・


































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