真夏の夜の出来事






あれは私が
小学校の5年生か6年生の頃の事だったと思います


その日は夏休み中と言う事もあって
夜、家族みんなで庭に出て
花火をしたりして
夕涼みがてら時間を過ごしていました



そうこうしていると


「なんだアレは?」

隣の家の方から声がしました


「おい、あれは何だ?」

また、別の家の方から声がしました


「何だろう?」

それまで何も変わった事はありませんでした


と、突然
夜なのにまるで昼間のように
いや
昼間よりもはるかに明るくなりました


「何? 眩しい!?」

「あー、あれ!」


言われるままに夜空を見上げた時です


無数の大きな明るい光が
夜空を埋め尽くしていました


「えっ? 何あれ?」

「わー! な、なんだ?」

「えっ!? 空飛ぶ円盤?」

「キレイ・・・」

「おい、何をそんな呑気な事を言ってる場合じゃないぞ!」

「地球が侵略されるの?」

「え〜? 嫌だよ〜!」

「怖いよ〜!」


近所のあちらこちらで
悲鳴にも絶叫にも聴こえる声がしていました

子供の泣く声も響いていました


「逃げなきゃ!」

「何処へだよ?」

「知らないわよ!」

「何が起こるんだ?」

「と、とにかく家に隠れるんだ!
 さっ、早く!」

「ちょ、ちょっと待ってよ!」

「早くしろ!」


そんな私達の喧騒とは関係なく
悠然と
しかも整然と隊列を組んでいるかのように
その無数の大きな明るい光は
いつまでも途切れる事なく
そしてゆっくりと夜空を渡っていました


私はただその美しさに見とれて
その場に立ちすくんでいました


幸い、攻撃も侵略もされずに済んだのですが・・・


あれはいったい何だったんでしょうか?


でも

私が未だに不思議なのは
あの光を見た事よりも

次の日

誰一人として
その話題をした人がいなかった事です


もちろん
どのテレビを見ても
新聞を端から端まで読んでも
それらしい記事は載っていませんでした


あれだけの光の大群
そして
あれだけみんなが騒いでいたのに

どうして?


あれは私の夢だったのでしょうか?

それとも
みんなあの光の主に洗脳されて
記憶を失くしてしまったのでしょうか?


私以外・・・


いや

もうひとつ可能性があります


洗脳をされたのが私だったとしたら?

私一人だけさらわれて
見た目は全く同じな別の世界

つまり

パラレルワールドに連れて来られたのだとしたら?


でも、何の為に?

それは分かりません


しかし


あの後
時々感じる”この世界”への違和感

それはどう説明すれば良いのでしょう?


あの光を見てから
翌日
ハッと思い出して
あの事件の事が出ていないかと
新聞を読みあさっていたあの時間までの記憶が
ポッカリと抜け落ちているのです


私は本当に”あの時”の私なんでしょうか・・・?































inserted by FC2 system