遊びに行っていた近所の公園から帰って
家の近くまで戻った時です

空を見上げながら恨めしそうに子供は言いました

「ねぇ、お父さん
 最近、虹って見ないよね。
 虹、見たいなぁ〜」

「あぁ、最近はずっと晴れた日が続いているからなぁ〜」

「どうして、晴れてると虹が出ないの?」

「うん、空の空気が乾燥してるからだよ」

「乾燥って?」

「つまり、空気の中に水分が無いんだよ。
 もし、どうしても虹が見たいなら
 雨が降ってくるのを待ってなきゃね。
 雨が止んでお日様が顔を出したら虹も出るかもよ」

「そうなの?
 虹は見たいけど、でも雨は嫌だなぁ〜
 だって、寒いし、濡れちゃうし、
 友達とだって外で遊べないもの」

「まぁ、確かにお父さんも
 雨はあんまり好きじゃないけど。
 でも、
 雨が降らないと困る事だってあるんだぞ」

「えー、どんな?」

「雨が降らないと木も大きくならないし、
 花だって枯れてしまうだろ?
 野菜だって困るし、
 人間や動物だって水が無いと生きていけないんだ」

「でも、水なら川だって海だってあるよ」

「そうだけど。
 でも、もしずっと雨が降らないと
 川だって海にだって水は無くなっちゃうんだよ」

「そうなんだ〜」

「動物も植物もみんな生きていく為には
 晴れた日ばかりでも雨の日ばかりでもダメなんだよ。
いくら嫌な事でも、それが無かったら
 楽しいとか嬉しいとか幸せだなって思う事も
 無くなっちゃうんだよ。
 逆に言えば、
 嫌な事とか辛い事があるから
 こうして普通に生きている事が
 本当は凄い幸せな事だって思えるもんなんだよ」

「ふぅ〜ん」

「お前だってさ、
 いくら大好きなカレーライスだって、
 ずっと毎日続いたら飽きちゃうだろ?
 でも、嫌いな食べ物の次の日に
 カレーライスが出たらテンションが上がるよね?」

「うん、お母さんのカレーライス、大好き♪」

「人が生きていく事って言うのも同じなんだよ。
何か辛い事があっても
 それをただ嘆いてばかりじゃいけないのさ。
 確かに、良い事も悪い事もある。
 良い事ばかりも続かないけど、
 でも、悪い事だって、いつまでも続かないんだ。
 人生には悪い事が必要だとか
 悪い事も無きゃダメだとは言わないけど
でも、例え悪い事があったとしたら
 それを現実として
きちんと受け止める事が大事なんだよ。
 それが、どんなに辛い事でもね」

「ん〜 なんか、難しくって分かんないよ」

「あはは、そうだな。
 未だ5歳のお前には難しかったな?
そうだ!
 ちょっと、ここで待ってて」

そう言うと
お父さんは家の裏に小走りでいきました

ほどなくして、お父さんが戻ってくると
手には散水ノズルのついた水撒きホースを持っていました


「良し、いいか?
 しっかり見てなよ」

そう言って
お父さんがノズルの引き金をグッと握ると
太陽にめがけて水を勢いよく発射しました

その時です

空に発射された水のしぶきが
太陽の光にキラキラ輝いて
そして小さな虹になりました








































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