サクラを咲かそう





それはとある春の日


キツネくんが歩いていると

その辺りでもひと際大きなサクラの木の周りを
ウサギさんが
ピョンピョンと飛び跳ねていました


「あれー、ウサギさん、何をしてるんだい?」


ウサギさんは飛び跳ね続けながら言いました

「早くサクラが咲くようにね
 飛び跳ねて地面を押しているの」


「サクラ? いくらなんでもまだ早いんじゃない?」


確かにサクラの木を見ると
蕾はまだ小さくて
いかにも堅い様子です


「無理だよ〜 いつもはまだ1ヶ月半は先だよ」


それでも
ウサギさんは飛び跳ねる事を止めません


「ねぇ、ねぇ、それより一緒に遊びにいかない?」

見かねたキツネくんはウサギさんに言いました


「でもね〜 こうしていると
 少しづつ蕾が大きくなってるのよ
 ちょっと見ていて!」

そう言うと
ウサギさんはさっきより大きく飛び跳ねました


「何も変わらないよ」

それに構わず
ウサギさんはさらに飛び跳ね続けました

すると
ユラッとサクラの枝が揺れたかと思うと
確かに蕾がちょっとだけ大きくなったのです


「ねぇ、どう?」

「ホントだ〜!」

キツネくんはビックリです

「ねぇ〜 ボクもやっていいかな?」

「ええ、もちろんよ♪」


そして
2人はサクラの木の右と左に分かれて
同じタイミングで飛び跳ねました


そこへ今度はリスさんがやって来ました

「ねぇ、何をしてるの?
 面白そうね〜 私も仲間にいれて♪」

「うん、じゃあ 1、2の3で一緒に飛ぶんだよ」

「OK♪」

そして今度は3人で息を合わせて飛び始めました


今度はシカくんがやって来ました

「おや、みんなで何をしてるんだい?」


リスさんは答えました

「うん、ピョンピョン面白いよ
 シカくんも一緒にどう?
 あれっ? でも・・・なんで飛んでるんだっけ?」


ウサギさんは笑って言いました

「そっか、リスさんには説明してなかったわね?
 実はね・・・」


ウサギさんは
リスさんとシカくんに説明をしました


するとシカくんは言いました

「えー? そんな話は聞いた事がないよ〜」


「いや、ホントなんだ
 ボク、さっき見たんだよ」

キツネくんが答えました


「信じられないなぁ〜」


リスさんは言いました

「まぁ、まぁ、私はどっちでもいいのよ
 こうしてみんなで飛び跳ねてると面白いんだもん」

「じゃ、騙されたと思ってボクも飛んでみるよ」


こうして4人でサクラの周りを飛び跳ねました


何度か飛び跳ねていると
またサクラの枝がユラッと揺れた途端
蕾はキュッと音がしたと思ったら
蕾が膨らんだのです


「ほらね!」

ウサギさんは得意満面で言いました


「ホントだ〜」

これにはシカくんもビックリです

「よし、それじゃもっと飛び跳ねようよ!」


でも
それから何度飛んでも
サクラの蕾は大きくなりませんでした


「やっぱり無理なんじゃない?」

「そうだね〜 これじゃ何日かかるか分からないよ」

「嫌なら止めてもいいよ
 私は止めないから」

「4人でも無理なんだから1人じゃ絶対無理だよ」

「そうそう、それにもっと暖かくなったら
 いつものように咲くんだからさ」

「嫌、私は止めない!
 どうしても今日咲かせたいの!」

「なんでさ? 今日、何があるの?」

「それは・・・」


ウサギさんが口を開きかけた時
ノソノソとクマくんがやって来ました

「おーい、みんなで何をやってるんだい?」


「実はね・・・」

シカくんがクマくんに説明をしました


「なぁ〜んだ、そんな事かい?
 なら、ボクもやってあげるよ」

そう言うと
クマくんは思いっきり飛び跳ねました


ドッシーン!!!

ドッシーン!!!


すると
サクラの蕾がプクーっと
また少し膨らみました


「よし、もう少しだ!
 みんな、もう1回やろうよ!」

「うん! やろう!」

「よし!」


「せーの!」

掛け声を合わせて
今度は5人で一斉に飛び跳ねました


その途端
サクラの蕾も堪り兼ねたように

ポンッ!

と音がしたと思ったら
一輪の淡いピンク色の花を咲かせたのです


「やったー!」

「うん、やったね♪」

「どーんなもんだい!」

「やった、やったー!」

みんな口ぐちに喜びました


「キレイね♪」

リスさんが言いました


「どうする? もっと咲かせるかい?」

クマくんが言いました


「いや、これでもう十分よ
 後は本当の春に取っておきましょう」

ウサギさんが答えました


ウサギさんに向かってキツネくんが言いました

「もう目的は達成できたの?
 何か早く咲かせたい理由があったんでしょ?」

「うん、実はね。今日はお母さんの誕生日なの。
 それでどうしてもお母さんに見せてあげたくて。
 みんなありがとう♪」

「そっか、良かったね。お母さん、きっと喜ぶよ」

「それじゃ、急いでお母さんを呼んでおいでよ」

「うん」

「いいなぁ、僕もお母さんに見せてあげようかな。
 お誕生日じゃないけど」

アハハとみんな大きな声で笑いました

「じゃ、私もお母さんに見せてあげようっと」

「それじゃ、みんなもお母さんを呼んでおいでよ」

ウサギさんはそう言うと
いつまでも
一輪だけ咲いたサクラの花を見ていました


それを見ていた
当のサクラの大木は苦笑いです

「やれやれ、今年の春は賑やかだわい
 そんな気も無かったのに
 みんなの熱意に負けて
 こんな時期に花を咲かせてしまったわい」


でも
サクラの木は嬉しそうでした

みんなが仲良く力を合わせている姿をみて
本当に嬉しかったのです

今年の春はいつもの年より
少しだけ早くなりそうですね



































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